安全な暮らしか、自然との共存か
地元浜松でサーフィンすると、学生時代に戻った感覚がありワクワクする。
夏は自転車を漕いで毎日のように海に行き、日が沈むまで遊んでいた。
大人になって振り返ると、とても贅沢な時間。
人は少なく波は豊かでとてもいい場所だ。
ところがこの夏、10代の頃から通っていたサーフポイントに不穏な大型重機が…
ポイントの脇を流れるそれなりに大きな川の中で、轟音を立てている。
どうやら堰き止めようとしているようだ。
地元に住む友達でさえ何の工事か知らない。
ノスタルジーの喪失。
生態系の破壊。
景観の破壊。
いろいろな不安がよぎる。
区役所で調べると、川を堰き止める水門を増設する工事とのこと。
不要だ!と即時に思ったものの、設置目的を調べると津波対策ということで、ほんの少しだけ納得した。
浜松では東日本大震災以降、津波対策として海岸という海岸に防潮堤が造られ、海と住宅街の数十メートルが分断された。
一方、湘南では海と暮らしが近い。
宮崎でも海を活かした街づくりができている。
浜松は、必要以上に危ないものと、海に蓋をする傾向にあると思う。
小学校の時、夏休みに入る前日には、海には近づくなと言われた記憶がある。
こんな素晴らしい海なのに。
その防潮堤すら抵抗があったが、その防潮堤の隙間となる河口に、同じく防潮のための壁を設置するのが今回の水門工事の目的らしい。
安全対策ということなら、わからなくもない。
肝心なのは、それが地元の民意かどうか。
区役所の資料を読み解くと、地域代表と有識者にて審議があったとこのと。
でも浜松に住む家族も誰も、その審議のことを知らない。
そしてコロナの状況により、工事の説明会開催が開かれず、この資料をもって代えさせていただきますという一言。
区役所の受付脇に貼ってあるのみ。
全く機能しない説明会代案に首をかしげつつ思う。
平和な暮らしは誰もが望むこと。
けど果たしてみんなが、この大規模工事を望んでいるのか?
1000年に一度の津波のために、生態系や景観の破壊を許しているのか?
私は工事に反対したいわけではない。
住民が公平に選択した結果なのかを知りたい。
そして一番あってはいけないのは、津波対策という住民の危機感につけこんで、数億円にも上る工事の発注が目的であること。
海の際という人目につかない立地で、公表せずに工事を進めること。
暮らしの安心か、環境の保護か、工事ありきの選択か。
『いつのまにか』『なんとなく良さそうだから』で工事が進むのだけはやめてほしい。