8/24、福島第一原発から発生した処理水の海洋放出が始まった。
つい先日、福島の海を旅した者として、また日頃から海で遊ばせてもらっている者として、震災直後に物資と共に被災地を尋ねた者として、懸念は積もる。
政府やメディアは、処理水の海洋放出に反対する中国や韓国からのクレームを問題視している。
そしてこのクレームに対し、『科学的根拠のない批判は受け入れられない』の一点張りで、まるで理解力のない人のように扱う。
しかし本当に反対意見は正当ではないのか。
私見として、原発処理水問題の本質は、クレームを悪者のように扱うことや、諸外国の対応を考えることではないと考えている。
処理水は本当に安全なのか。
海洋放出という決定が正しいのか。
コレこそが議論すべき点であり、この壁を乗り越えていないからこそクレームが起こっているのであるのではないか。
そして抗議電話が中国や韓国からだから不快に感じているように思う。
事実、日本人からの抗議電話や抗議活動にメディアは触れない。
この問題に政治を混同するなという人が、政治と外国人差別を無意識に持ち込んでいる矛盾。
そしてそれに気づけない日本人の単一民族国家の弱点。
これでは問題の本質に向き合えないし、当面解決はできない。
素人ながらに私は思う。
●政府が安全と言っているからと単純にそれを信じている国民こそが危険ではないか。
●真に安全なら、海洋放出ではなく生活用水にすればいいのではないか。
●放射能を海に流しているのだから、不安になるのは当然のことではないか。
●放射能の有害物質は基準値より少ないとはいえ、有害物質を海に流すこと事態が倫理的に許されるのか。
●福島の処理水は、事故で発生した核燃料に浸った汚染水を希釈したもの。通常運転の原発の冷却水との単純比較で、安全という主張は成り立つのか。
●トリチウム以外は除染して海洋放出しているとするが、まだ人類が発見していない有害物質はないのか。
●希釈しているとはいえ、トリチウムが半減するまでに12年以上かかることから、長期的に蓄積することはないのか。
●多くの隠蔽や改ざんが吐露している政府や東電の発表するその数値自体を信用していいのか。
●すでに東電の汚染水処理の作業ミスが確認されているが、今後50年続くとも予想される処理水放出期間に完全な安全作業は保障されるのか。
●IAEAは処理水は安全基準を満たすと判断したものの、IAEAとして海洋放出という手段は推奨していないと明言しているし、そもそもIAEAは第三者機関である前にに国際原子力機関であることを忘れてはいけないのではないか。
●中国の抗議に対して、政府はこれから理解を求めていくと声明を出しているが、それはの震災後のこれまでの12年間に済ませておくことだったのではないか。
私は海の側で育ち、海で遊ぶ者なので、公平な判断ができなくて申し訳ないが、それでも素人の私でさえ疑問はこれだけ思いつくし、感情論抜きに冷静に考えても不信感は拭えない。
汚染水を処理しなければ、原発の廃炉は進まないという事実は理解するが、政府の言う科学的根拠だけではあまりに説明が乏しく、あまりにも福島を無視した強硬な実行だったのではないか。
そしてその論点は、中国からのクレーム電話殺到という形でアッサリとすり替えられてしまっていないか。
この処理水問題の本質は、もっと違うところ(安全性と判断の妥当性を問うところ)にあるはず。
そしてその深層には、そもそも無関心であること、そしてメディアを鵜呑みにした思考停止という問題もはらんでいるのではないか。
提言に付随して、以下も付け加える。
岸田首相が、放出直前に処理水について福島の各自治体を訪ねた会談では、結論ありきの説得作業だった様だし、漁協組合のトップには責任者である自らではなく西村大臣を説明に向かわせるという雑な対応。
たしか総裁選では、『人の話をよく聞くこと』を武器に当選を果たした岸田氏だが、福島の人の声は無視に近い。
何かあれば私が全ての責任を取ると息巻いたところで、自然への汚染や福島の人々の心は回復しない。
福島で出会ったローカルサーファーのひとりは、『海洋放出なんて嫌に決まってるべよ。でもどうせ上だけで決めてしまい、俺たちの声なんて届かねぇ』と遠くを見つめた。
大地震に加えて大津波。
さらに原発の核汚染被害に加え、このタイミングでの処理水放出という四重苦。
福島ではラジオや電子掲示板で日々放射線量を伝え続ける日々だし、いまだ家に帰れない人もいる。
震災から12年もの歳月が経ってもなお、復興に向かえない福島の悲しい現実を知るべき。
まだあの大震災から前進できずにいるんですよ!?
この惨状を以ってしてもなお原発にこだわる政府や東電、自民党、経団連の心ない判断には心底呆れる。
12年間この処理水を放置し、イチバン安上がりな対応策として海洋放出を強硬した政府。
近隣諸国は何かにつけて反日を訴えるのはわかっていたことだし、年間1600億円の売上を計上する海産物の太い輸出先である中国にボイコットされれば、安上がりなはずの手段が逆に高い代償を負ったかにも思える。
国内外に失った信頼など数値にできない損失を鑑みれば、安上がりだなんてとても言えない。
(実際は、安上がりなはずの当初の処理予算34億円の約38倍の経費1290億円がかる見込みも知られている)
また中国の魚介類輸入停止措置を受け、岸田首相は1000億円相当の支援策をまとめた。
ちゃんと対応していれば、その支援策さえ不要だったはず。
民意に寄り添っているように見せているが、完全に過失と税金の無駄に思える。
いまからでも他の解決策を選んで欲しいと願うし、海や自然で遊ばせてもらうプレイヤーとして、福島、宮城、茨城のサーファーの声を受け止め代弁したい。
こんなストレスのかかる時代にこそ、海や自然で過ごす時間は重要だし、海も自然も大切にしなくてはならない。
そして忘れてはいけないこと。
こうした判断をしている政府を選んでいるのは、私たち国民。
百人いれば百通りの価値観があるが、今の時代にそぐわない価値観の政治家が多すぎる。
古き日本の偏った考えに終止符を。
政府に声をあげてはいけない教育に危機感を。
今こそ行動。
沈黙は容認です。