2020年5月18日月曜日

旅という視点から見たスキー


愛してやまないSweet Protection とのコラボ企画での執筆。

スキーについての記事ですが、私にとってのスキーは旅との関係が深いため、旅という視点からスキーについて考察いたします。


TKY Kawaguchi
世界一周トラベルスキーヤー

★ShareTavi プロジェクト代表
★日本山岳ガイド協会認定スキーガイド
★野沢温泉コンパスハウス・ディレクター兼メインガイド
★Riki Japow Guide 所属ガイド
★パタゴニア日本支社
★利尻富士アンバサダー
★国家英語通訳案内士
★トラベルサーファー
★フリーランスライター

Sweet Protection / Armada Skis / Nordica Boots / ShareDesign / G3 gear
RUWA stretch & fitness / Studio ONE yoga etc...






目次
・私が思う旅の魅力
・スキーと旅の相性
・スキーをもっと楽しむために
・子に事態を見据えて



私が思う旅の魅力


私は産まれが母の実家である新潟県六日町(現:南魚沼市)で、物心着く前からスキーをしていたそうです。

ただ、育ちは静岡県浜松市だったことから、スキーに行くときは移動がセット。

近場のスキー場へ行くこともありましたが、新潟の祖父が六日町ミナミスキー場(現:ムイカリゾート)のスキー学校の校長だったこともあり、連休となれば六日町まで行くのが通例でした。

スキーへ行く日は、父が仕事から戻る夕方までに支度を整え、夜のうちに家を発ち、眠い目をこすりながら助手席で北上する風景を眺める。

とはいえ当時はまだ子供の私はいつしか寝てしまい、明け方、排気ガスの臭いとドアから忍び込む冷気で目を覚ます。

そこは夜明けが照らす白い世界で、胸が高鳴る。

これが幼少の私にとってのスキーの思い出のひとつです。



そして高校生になって、バスや電車を利用して自力で行くようになり

車の免許を取れば、車を走らせて友達だけで行くようになり

次第にスキーに並ぶくらい、自分の行動範囲を広げることが楽しくなっていました。

今思えば、自力で行動することで、自分が大人になったかのように思い上がれたのでしょう。。。汗

と、ここまでは関東以南のスキーヤーなら共感してくれる方もいるのではないでしょうか?

北上した先で羊蹄山が見えてくれば旅のバイブスも上がる






まだ見ぬ土地へ試行錯誤しながら旅して滑ることにすっかりハマった私は、その後も北海道まで車で長期遠征したり、東北を車中泊で周遊したりと、仲間と行動範囲を広げるのに夢中でした。



その頃はちょうどフリースキーがゲレンデに増え始めた頃。

シーンのパイオニアを追いかけながら、大会(当時まだビッグエアと呼ばれていた)やイベントに必死で参加していました。

そして勢い余って大学を休学し、カナダへ修行へ行く決意をします。

まだ英語も話せなかったし、海外経験も乏しかったにも関わらず、単身カナダ・ウィスラーに乗り込み、家探しから始めました。

カナダ・ウィスラーでのスキーはスケールが大きくて、スキーの価値観を底上げしてくれたし、この時単身で挑戦した苦労は、今の自分には不可欠な経験となったのですが

そこでもスキーに並ぶくらい旅そのものが楽しくて、結局ウィスラーだけに留まらず、グレイハウンドという格安長距離バスを乗り継ぎ、お金を節約しながらヒッチハイクを繰り返し、アメリカ大陸を縦断・横断し、北極圏に滞在し、時に滑り、行動範囲を広げていました。

海外の貧乏旅に味をしめた私は、復学後も夏休みや冬休みを利用しては、アジア方面のバックパッカーにハマったり、中学生の頃始めたサーフィンのデカいケースを片手に提げ、インドネシアをバイクで走り回ったり、フェリーでスキートリップしたりしたのでした。


ネットの情報もまだ少なかったし、ツアーも参加できず、ガイドも雇えず、いつもとにかく自力旅だったのでたくさん遠回りしましたが、試行錯誤しながら探したポイントでスキー(時にサーフィン)を楽しむことが、いつしか生き甲斐となりました。

こうして言葉にまとめると、共感してくださる方もいるのではないでしょうか。


元ナショナルチーム・フリースキーヤー米谷優と
インドネシアをバイクでサーフトリップ



仲間と自然のフィールドを巡る旅はやめられないのだ



スキーと旅の相性


結論から申し上げると、スキーと旅は、とても相性の良いアクティビティです。



そもそも競技としてのレベルが上がれば、スキーに限らずどのスポーツでも遠征する必要が出てきます。

なかでもスキーを含むアウトドア・アクティビティは、自然を相手にしているため、遠征先によって大きな違いが生まれます。

(誤解を恐れず比較するならば、競技会場の差があまりない体育で取り組むスポーツ、特に室内のスポーツを想像してください。)


その土地によって景色と地形と標高が変わり、気温と湿度が変わり、雪質が変わる。

いろいろなロケーションを滑るのは難しいですが、胸が高鳴りますよね!

ということで、スキーと旅は相性の良いアクティビティです。

カナダのロッキー山脈は雄大なロケーション

日本の日本海側は世界有数の豪雪地帯

島にも海を眺める独自のロケーションが(利尻富士)





そして数あるアウトドア・アクティビティの中でも、特にスキーが旅との相性が良いと考える最大の理由が、各地にあるスキー文化との出会いです。

スキーが持つ歴史は長く、紀元前2500年頃には北欧で狩猟のための移動手段として使われていた記録があるそうですし、1870年代にはスポーツとしての競技が始まっていたそうです。

オガサカスキーが創業から108年という歴史を持つことからも、スキー文化は各地で100年単位で独自に育まれたと想像できます。

例えば、北海道の雪質やナイター文化は世界中のスキーヤーを虜にしています。

そして縦の滑走距離が長く、地元に愛されている東北のスキー場で育まれた文化があり。

重い雪に鍛えられつつ民家の脇でも滑れる新潟のスキー文化から、バブル人気を経て競技実績に裏付けられた長野のスキー文化があり。

各地のスキー文化を違いを楽しみながら旅したら、とても楽しいですね!

(オガサカスキーはスキーブランドの中で世界3位の歴史を誇り、日本は世界で最も多くのスキー場が営業している国)


日本スキー史も長い



同じく世界を見渡せば、その文化の種類はとんでもない数ですね。

北米でもカナダとアメリカとでは大きく違いますし、さらにその中でも西海岸の豪雪、中央の山岳、東海岸の極寒で氷のようなバーンまで、土地ごとにユニークな文化があります。

ヨーロッパではさらに国が乱立し、アルピニズムの長い歴史と相まって、国の数だけ独自の文化が存在します。

市町村サイズの小さい国ですらスキーが国技として定着し、ナショナルチームが組織されているわけですから、その数たるや。。。

そして日本人にお馴染みのニュージーランド、オーストラリア、アジア諸国、南米、アフリカ。


この通り、それぞれのロケーションを楽しめるうえ、さらにその旅先の数だけ存在するスキー文化やローカリズムに触れられることが、スキーが旅に向いていると考える理由です。

繰り返しますが、スキーと旅はとても相性の良いアクティビティです。




アメリカのスキーの歴史も長く
フリースタイル発祥の地
ライダー:ナショナルチーム藤井源

ヨーロッパの山岳は手強く、アルピニズムの歴史が長い




旅をもっと楽しむために


スキー旅の魅力に共感していただけたら、旅を繰り返した中で発見した私なりのコツを紹介いたします。



・荷物はできる限りコンパクトに


まず荷物は出来るだけコンパクトにすることです。

ただでさえ大きいスキーケースを携帯するので、荷物はコンパクトな方が旅を楽しめます。

できればキャスター付きのスキーケースに板からウェアまで全て詰め込み、他はバックパックひとつというスタイルがオススメです。

そのために、『あったら便利=なくても平気』と呟きながら、つい増やしがちな旅の荷物をできるだけ減らしましょう。

Sweet Protection や patagonia など専門ブランドが作っている山用ウェアは、アウターだけでなくインナー(肌着や中間着)も機能がよく、

1着で山だけでなく移動中、街、宿などで着られるし、とにかく快適でラク。

あらゆるシチュエーションで着回せるので、持ち歩く服の種類を大幅に減らせます。

そして生地は速乾性が高いので、旅先で洗濯しても朝には乾くため、着替えセットも減らせます。



でも海外への旅なら、ナイトパーティー用ドレスはコッソリ持っていった方がいいかも(笑



ヘルメットが意外とかさ張りがちですが、軽くて頑丈なSweet Protectionのヘルメット&ゴーグルならば、荷物は一気にコンパクトになります。

特に私の愛用するAscenderはカッコ良くて、クライミング安全規格とスキー安全規格どちらも認証を受けるほど頑丈にも関わらず、バッグにすっぽり入るほどコンパクトで軽量です。

そう、Sweet Protectionのギアは、フィールドに限らず旅の移動でも真価を発揮するのです。

旅先での機動力が増し、より楽しめるようになります。

参照 Sweet Protection サイト

愛用のAscender





旅ではコンパクトかつ信頼できるギアが不可欠




・バックカントリースキー


旅を繰り返すうち、バックカントリースキーを盛り込むと、スキー旅はさらに味わい深いものに昇華することに気づきました。

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バックカントリースキー

リフトを使わず、自分の足で登り、スキー場でない手付かずの大自然を滑る山岳スキー。
冬山登山にスキーを利用し楽しむアクティビティ。
ただしバックカントリースキーには常にリスクが付きまとうため、独自の装備と経験が必要。
エキスパート以外はガイドを利用するのがオススメ。
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スキー場以外のバックカントリーエリアが旅の選択肢に加わることで、遊べるエリアが一気に拡大します。

斜度のある雪面さえあればスキーができるので、スキー場がないエリアへの旅も計画できます。

またリフト営業時間を気にする必要がないので、スケジュールが柔軟になります。

移動中の道端に良い斜面があればサクッと滑れるわけですし、旅先の絶景ポイントでも滑れます。

むしろスキーでなければ行けない山域もあることから、バックカントリースキーがあれ行動範囲は拡大し、旅の魅力が一層強まります。

※ただし私有地や立入禁止区域での行動は厳に慎みましょう


仲間と旅先のロケーションを味わいながらのハイクも一興

大自然を満喫できる
Photo : Yuta Ueno


海だって滑れる

夕焼け。時間に縛られることもない


火山も舞台に




岩だらけの氷瀑もスキーの舞台に



北極圏のアラスカ・パイプラインでさえ滑れる


つまりバックカントリースキーがあればどこへでも行ける



・現地に溶け込む気持ちを持つ


もうひとつ、旅するときは、現地に溶け込むようにしています。

まず現地の人に敬意を表し、お邪魔しているという気持ちを忘れないよう努めます。

各地で観光収入は大切ですが、かといって観光客は何をしても優遇されるわけではありません。

他所から来た人が自宅の庭先を我が物顔で歩いていたら、誰だっていい気分はしませんよね。


そして旅先では、観光客の定番のコースから現地の人の定番コースまで、広く訪ねるようにしています。

あえてその土地の代表的な観光地から、現地のリアルな食文化を味わえるローカル食堂や市場まで足を運びます。

その場で会う方とコミュニケーションを重ね、現地の方言(外国語)でその土地の風習や考えを聞くだけでも旅気分は盛り上がりますよね。

そしてホテルよりも民宿を選んだり、キャンプでその土地の自然を体感したりと、余すことなく現地に溶け込みます。

なお、海外ではどんな小さな街にも必ずといって良いほど教会やモスクがあるので、積極的に立ち寄ると文化に触れられやすいです。

※ただし宗教施設は立入や服装に関してデリケートな場合が多いので確認しながら行動

市場は地産食と出会いの宝庫

時には現地の自然で時を過ごすのも楽しい

海外の街には必ず教会がある







この事態を見据えて


スキーと旅の魅力を再確認したところで今後の展望を検証しましょう。

記憶が薄れがちですが、コロナショックと同時に我々スキーヤーは、記録的な暖冬少雪を経験しました。

このシーズンを経て、なおこの危機的状況を放置することは、スキー文化にとっての自殺行為と考えます。

我々スキーヤーは、都市で日々を過ごす人達よりも自然の動向に敏感で現実を目の当たりにしています。

まずはこの事実を身近な家族や友人に危機として伝え、アイドリングストップ・ゴミ削減・ゴミ分別・リサイクル徹底・再生エネルギー選択など、できることから対策を始めましょう。


参照:Protect Our Winters
スノーボーダーとスキーヤーが発起人となり気候変動に対してアクションする団体


見るからに悲しい現実




そして最後に

このコロナショックを経て気づいたことは、不自由を味わってもなお、スキーと旅に思いが馳せるということ。

我々スキーヤーは、次に滑る日を心待ちに人生を過ごし、スキーが日々の活力、人生の糧になっているという実感です。


現代ではIT技術のおかげで、スマートフォンをクリックすれば、誰でもリビングのソファーにいながら、タナー・ホールになってアラスカのピローラインでダブルコークを決められますね。

テレワークが推奨され、AIが盛んな時代になることで、コンテンツが増え続け、バーチャルな体験のハードルは今後さらに下がり続けるでしょう。


でもいくらスマホの画面で妄想しようとも、結局のところ我々スキーヤーは、

手間と時間がかかっても息を白くしながらこの足で雪を踏みしめ、

疲労を覚悟で白い山並みと空の青のコントラストに心踊らせ、

頬を切るような冷気を裂くように雪のスプレーを上げ、

そこで仲間と交わす歓喜のハイタッチこそが魂を震えさせることを体で覚えています。

それどころか、自粛の反動と、バーチャルが溢れかえった反動で、リアルな体験はきっと今まで以上に価値あるものへと昇華するでしょう。

やはり大好きなスキーがしたい!!!!




この瞬間のためにあらゆる犠牲を厭わないのがスキーヤー
Photo : Daigo Takeuchi






そのリアルな体験には、防御力の高いヘルメットとクリアな視界を保つゴーグルを必ず携行し、ケガなく大好きなスキーを生涯続けられるよう祈りながら

この冬、一緒に雪山を旅し、Sweetな思い出を作りましょう!



2020/5/18   TKY Kawaguchi










旅のご案内、並びにガイドご依頼、大歓迎です。




Sweet Protection Japanでは、

#遊べる日のために今を生きよう

ということで新しい5つのサービスを開始しています。





私の旅を記録したムービー集
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世界一周スキー・サーファー TKY Kawaguchi

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