2016年5月11日水曜日

アラスカ回帰 亡き父とオーロラ

【3/2 WED】

まだ陽も昇らない暗いうちから目を覚まし、現地の格安パーキングサービスに車を預けてシアトル・タコマ空港へ

日の出と共にアラスカまでフライト

海を越えると、白く輝く急峻な山と深く谷を削る氷河が見えてくる

アラスカ・バルディーズ付近上空から氷河を望む


僕はアラスカとユーコン、いわゆる極北の大地が織りなす特異な自然環境に魅せられ、何度も足繁く通うようになっていた

(一般的に北緯60°以北を極北と呼ぶことが多い)


今回のアラスカも特別な思いを抱いていた


極北は僕にとって『特別な地』




初めて極北を訪ねたのは22歳の頃

カナダのユーコン州だった

亡き父の影響もあり、当時の思い付きで向かったのだった

聖なるユーコン川



父はカヌーイストであり、カリスマカヌーイストにして作家の野田知佑氏が紹介するカナダ・ユーコン州の聖なるユーコン川でのカヌー下りに憧れていた


僕は当初その話をあまり真剣には聞いていなかったが、どうも素晴らしい未開の地という印象だけは幼い頃から焼き付いており、思い付きでユーコンのファームに滞在のアポを取ってバスに飛び乗ったのだった


その時はまだカナダにワーキングホリディビザで渡航したばかり、入国から1ヶ月しか経っていない頃だった

ユーコンまでのバスはバンクーバーから2泊3日の道のり

ユーコンにある集落間は長ければ数百kmも離れている

それだけでもいかに文明から隔離された辺境の土地かがわかるかと思う



当時海外の経験も浅いガキが、極北という隔離された未開の地に飛び込んだ勇気を、手前味噌ながら今の自分からでも褒めてあげたい


全てを変えたユーコンでのファームステイ
ホストファザーは5年前他界してしまった

ユーコン州でのカヌーと人里離れた大地でのファームステイは、特異な極北の大地を愛でるには充分すぎる経験となり、そして僕の価値観を大きく変えた

以来、極北には何度も足繁く通った



ちなみに僕の大学時代の卒論は『極北に住むイヌイットの経済状況』

それほどまでにこの土地に愛着と魅力を感じている



付け加えるなら、僕が執筆させていただいているTABIPPOというウェブメディアにて、極北トリップのススメを以前投稿したので一読いただければ幸いです






そんな僕にとっての『特別な地』に向かうだけで胸が高鳴った


極北は厳寒で自然環境も特異だ

冬なら都市部でも-40℃はくだらないし、北部では1日中太陽が昇らない場所もある

肌を切るほどに凍てつく深い闇の上空には、神秘のオーロラが輝き舞い踊る



逆に短すぎる夏は、ようやく氷点下の気温を脱し、1日を通して陽が沈まない白夜を迎える

そして大きく逞しい野生動物が広大な大地で躍動する



今回は春を迎えているタイミングだったので-40℃という厳寒な環境は味わえないが、それでも気温は-15℃を下回る

そんな特異な土地に嫁を連れて行き、オーロラを見せたいと思っていた


飛行機はアンカレッジを経由し、フェアバンクスへ到着した



空港には氷の民イヌイットの子孫が歩いている

この旅でイチバン重ね着をしたはずなのに、それでも思いの外冷たく感じる空気のなか、アラスカの地を踏む

まだ昼過ぎだが、すでに陽が傾いている


僕はまた極北にやって来た





【3/3 THU】


現地の人はすでに春が到来したと決めつけ、無理やり喜んでいる

長く暗い冬に飽き、夏を渇望する心理がそうさせる


当然冬のピークシーズンに比べたら暖かいが、それでも常人には春とは言えない気温だ



ひな祭りだというのにこの日も-18℃を記録

日本ではありえないその寒さを味わうのも極北の魅力だが、外出時間はやはり限られる



今回のアラスカトリップは全て同じホテルを確保

室内暖房、室内キッチンが完備され、館内にはプールとジムもある

これまで過ごしたどの夜よりも快適なのだ



加えて至近にスーパーがあるので、大好きな調理が自由にできる

昨晩も今日も全ての食事を自炊で過ごした



アラスカオースター(牡蠣)とウィンナーのトマトソース煮込み




そして昼過ぎに陽が傾くと、オーロラ予測のウェブサイトで本日の発生率を確認する

その後フェアバンクス上空を捉えたライブカメラのページを開き、室内にいながらオーロラの出現を待つ


オーロラ観測もデジタルな時代となった



オーロラは大気圏上空で起こる現象なので、空が曇ってしまうと観測できないが、フェアバンクスは内陸の街なので、晴天率が高い

加えてフェアバンクスは、オーロラが発生しやすいオーロラオーバルというエリアの直下に当たる

つまりこの街はイエローナイフと並んでオーロラの観測率がかなり高いのだ

そのうえ北米の極北圏で第二の規模の都市となるため、快適にオーロラに出会える



昨晩もこの夜も、さっそく夜空にはためく光の帯を嫁に見せることができた

なんど出会っても感動で心が洗われる


嫁は最初、キレイすぎるためかオーロラをオーロラと認識できないでいたが、それでも確認した瞬間、感動のあまり喜びの声をあげた


それほどまでにオーロラとは神秘的なのだ

初日のオーロラ 市街地でもこの明るさ



オーロラは英語でNorthern Lights (ノーザンライツ)


オーロラを見慣れていない方は、雲とオーロラの区別がつかないことが多い

例えばそれが雲だったとしたら、輝かないし、揺れるように動かない、そして透けていないので星が見えない

かたやオーロラは、北から静かに現れて空を覆うように揺れ動くうえ、光の現象なので後ろに星が透けて見える


慣れてくるとその動きからすぐ判別がつくようになる





古来よりイヌイットの間では、その神秘な姿からオーロラには病気の治癒効果があると言い伝えられてきた

冒頭で紹介した、ユーコンに憧れていた父だが、実は私は生前の父をユーコンへ連れてきたことがあった



当時父はすでに病気で余命宣告を受けており、絶望の淵にいた

そこで僕は父を励ましたい一心で、かねてよりの父の夢であり、いつか一緒に行こうと約束していたユーコン行きを、この段階で改めて申し出た

父は当初、病気の体では無理との一点張りだったが、いつしか考えを変え、医師を説得し相談し、体調を精一杯整えた


僕は事情を上司に打ち明け、同僚の協力も得て当時勤めていた会社を1ヶ月休職させてもらい、医療器具を全て背負って旅に出た



冷静に考えれば無謀だったが、それでも針に糸を通すように奇跡的に旅は進んだ


余命わずかな父との最期の旅



ユーコンとアラスカを前に気持ちが高ぶり、みるみる気力を取り戻した父

その時点で旅の目標のひとつ、父を励ますことは達成できた


そしてついにユーコン川を二人で下り、人生の夢を果たした父はその夜オーロラに出会った

父の夢であったユーコン川下りカヌー



オーロラは病気を癒す

余命いくばくもない体だったはずの父が、そこから半年以上も命をつないだ


その夜のホワイトホースでのオーロラ





聖なるユーコン川とオーロラに改めて神秘を感じた

そしてこのチャンスを与えてくれた関係者の皆様に感謝しています

皆様このご恩は一生忘れません



僕はかつてそんな奇跡の旅を経験した


これを経てユーコンとアラスカにはさらに『特別な地』という思いが宿った




男親子ふたりの旅


照れくさいけど、でも旅は心を素直にしてくれる

そして人を元気にする

奇跡をも起こしてくれる



これだから旅は最高だ

聖なるユーコン川の白夜





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